日本酒のラベルにある「R7BY」や「2025BY」。BYは「酒造年度」のことで、毎年7月1日から翌年6月30日までを一つの区切りとして数えます。2026年7月からは令和8BY(2026BY)に入り、この秋に仕込まれる新酒は令和8BY、いま店頭に並ぶひやおろしは令和7BYです。
この記事では、BYの意味と読み方、裏ラベルの「製造年月」との違い、10月ごろから本格化する新酒造りの1年のカレンダー、そしてBYを手がかりにした選び方をまとめました。ラベルのBYが読めると、同じ銘柄でも「いつの酒か」が分かり、新酒や熟成酒の楽しみ方が広がります。
▲ 秋は新米の季節。酒蔵の1年も、ここから動き出す
そもそも「BY(酒造年度)」とは?
BYは「Brewery Year(醸造年度)」の略です。カレンダーの1月〜12月ではなく、酒造りの季節がちょうど収まるように、7月1日から翌年6月30日までを1年として数えます。
① 7月1日〜翌年6月30日が1年
秋から春にかけてが酒造りの主な時期のため、その期間が一つの年度に収まるよう、7月1日から翌年6月30日までを酒造年度としています。たとえば2015BYは、2015年7月1日から2016年6月30日までです。
② 令和7BY = 2025BY
元号表記では令和7BY(R7BY)、西暦表記では2025BYです。令和2BYは2020BY、令和3BYは2021BYにあたります。BYの数字は「その年度が始まる年」で、冬に搾った酒でも、年が明けた翌年ではなく前の年の数字になります。
③ 2026年の秋は、令和7BYから令和8BYへの切り替わり
2026年7月1日で令和7BYが終わり、令和8BYが始まりました。この秋から冬にかけて新たに仕込まれ、11月ごろから出荷が始まる新酒は令和8BY。一方、春までに搾られた酒を夏越しさせて出荷する「ひやおろし」は令和7BYです。
見どころ①:令和5BY〜令和9BYの期間早見表
ラベルで見かけやすい年度を、期間とあわせて整理しました。元号の年に2018を足すと、おおよその西暦(令和7なら2025)になります。
| BY(酒造年度) | 期間 | 主に出回る酒の目安 |
|---|---|---|
| 令和5BY(2023BY) | 2023年7月1日〜2024年6月30日 | 2023年の秋〜2024年春に仕込まれた酒 |
| 令和6BY(2024BY) | 2024年7月1日〜2025年6月30日 | 2024年の秋〜2025年春に仕込まれた酒 |
| 令和7BY(2025BY) | 2025年7月1日〜2026年6月30日 | 2026年の春までに搾られた酒。いま店頭に並ぶ「ひやおろし」などはここ |
| 令和8BY(2026BY) | 2026年7月1日〜2027年6月30日 | 2026年7月に始まった新しい年度。この秋に仕込まれる新酒はここ |
| 令和9BY(2027BY) | 2027年7月1日〜2028年6月30日 | 来年7月から |
※BYは仕込み・搾りの年度を表すため、実際に瓶詰め・出荷される時期とは一致しないことがあります。
見どころ②:日本酒の日が10月1日なのはなぜ?酒造年度の歴史
10月1日は「日本酒の日」です。この日付には、昔の酒造年度が関係しています。
- 明治時代の酒造年度は10月1日始まり:明治29年(1896年)の酒造税法では、「毎年10月1日から翌年9月30日まで」が酒造年度とされていました。蔵元はこの日を「酒造元旦」と呼んだとされています。新米が出回り、蔵入りが始まる時期とも重なります。
- 1964年まで10月1日〜9月30日、1965年から7月1日〜6月30日に:1965年の醸造シーズンから、現在の区切りに改められました。1960年ごろには、年間を通して酒を仕込む四季醸造も登場しています。
- 「酉」は酒壺の形:十二支の10番目の「酉」はもとは酒壺をかたどった字とされ、10月は酒と縁の深い月とされています。日本酒造組合中央会が1978年に10月1日を「日本酒の日」と定めたといわれます。
🍶 豆知識:酒造税法上の「製造」は搾りが終わった時点
酒税法では、酒の製造は「搾り(圧搾)」が完了した時点で終わるものとして扱われるとされています。そのため、搾りが7月1日以降にずれ込んだ酒は、新しい酒造年度の酒として数えられます。
※日本酒の日の由来には諸説あります。
見どころ③:ラベルの読み方|BYと「製造年月」は別のもの
ラベルの表記は、蔵によって少しずつ異なります。次の4つはすべて同じ年度を指しています。
| ラベルの表記 | 意味 |
|---|---|
| R7BY | 令和7酒造年度の略記。「R」は令和(Reiwa) |
| 令和7BY | 元号をそのまま書いた表記 |
| 2025BY | 西暦で書いた表記。令和7BYと同じ年度 |
| 7BY | 元号の年だけを書いた短縮表記 |
BYは「仕込んだ年度」、製造年月は「瓶詰めした時期」
裏ラベルによく書かれている「製造年月」は、国税庁の表示基準で、販売する目的をもって容器に充填し、密封した時期とされています。つまり、仕込み・搾りの年度を表すBYとは基準が違います。
▼ たとえばこんなラベルだったら(例)
表に「R7BY」、裏に「製造年月 2026.9」とあれば、2025年7月〜2026年6月の酒造年度に仕込まれた酒を、2026年9月に容器へ詰めて密封した、と読めます。搾ったあと、夏を越えて貯蔵してから出荷する「ひやおろし」は、まさにこのパターンです。
BYの表示は任意。書いていない酒もある
BYの記載は法律上の義務ではなく、蔵が任意で表示します。複数の年度の酒を合わせたブレンド酒には、通常BYは書かれません。BYがない酒でも、製造年月を見れば瓶詰めの時期の目安が分かります。
見どころ④:10月から動き出す、酒蔵の1年カレンダー
酒蔵の1年は、新米が出回る秋に始まります。BYの切り替わりは7月ですが、実際の酒造りは、秋から春にかけて進みます。
▲ 秋は酒蔵がいちばんにぎやかになる季節
| 時期 | 蔵のできごと | 店頭・ラベルでの目安 |
|---|---|---|
| 9月末〜10月 | 蔵入り・仕込み開始(蔵によって時期は異なる) | 酒造りの新シーズン。9月末から始めて10月にフル稼働する蔵もある |
| 10月中旬 | 酒米の収穫(山田錦の収穫時期の目安) | 新米が出回り、酒造りが本格化していく |
| 11月ごろ〜 | しぼりたての新酒が出荷され始める | 「新米新酒」「しぼりたて」「初搾り」など。BYは令和8BY |
| 冬 | 寒仕込み | 気温が低く雑菌が少ない冬は酒造りに向くとされる |
| 3〜4月ごろ | その年度の酒造りが終盤に | 蔵によって3月ごろまで、または4月ごろまで続く |
| 春(4〜5月) | 全国新酒鑑評会の審査 | 令和7酒造年度分の予審は4月21〜23日、決審は5月12・13日 |
| 6月30日 | 酒造年度の最終日 | 翌7月1日から新しい年度(令和8BY)に |
| 秋 | ひやおろし・秋あがり | 春に搾って夏を越えた令和7BYの酒が、秋に出荷される |
※蔵や地域、造りの方針によって時期は異なります。年間を通して仕込む四季醸造の蔵もあります。
新酒造りが始まる9月末〜10月
千葉の鍋店は例年、酒造りを9月末から始めて10月にフル稼働させるとされ、和歌山の吉村秀雄商店は9月の蔵入りから3月までの半年間、蔵に泊まり込んで酒を造ります。酒米の山田錦は、兵庫県の資料では収穫時期が10月中旬とされています。
春の新酒鑑評会も「BY」で数える
2026年春に審査された全国新酒鑑評会(令和7年度)は、令和7酒造年度に造られた酒が対象で、出品793点のうち入賞は411点、金賞は217点でした。予審は4月21〜23日、決審は5月12・13日に行われています。結果は、全国新酒鑑評会2026の金賞受賞酒の記事で詳しくまとめています。
「ひやおろし」は何BY?いつ解禁?
▶ 「ひやおろし」とは?2026年の解禁時期とおすすめ銘柄・選び方完全ガイド見どころ⑤:BYを手がかりに、日本酒をもっと楽しむ3つの方法
① 新酒(令和8BY)を、出荷の最初から味わう
11月ごろから出荷が始まる「しぼりたて」は、その年度に搾られたばかりの新酒です。たとえば沢の鶴は2025年11月10日、令和7酒造年度に醸した新米新酒の生原酒(初生原酒)を発売しました。生酒や生原酒は要冷蔵のものが多いので、保管の表示を確認して購入しましょう。
② 同じ銘柄のBY違いを飲み比べる
同じ銘柄でも、BYによって味わいが変わることがあるといわれます。原料米の出来や気候、造りの方針が年ごとに違うためです。前の年度の酒と飲み比べると、その年ならではの個性が見えてきます。
③ 熟成酒(古酒)に挑戦する
BYが数年前の酒は、貯蔵によって味わいが変化した熟成酒の可能性があります。全国燗酒コンテストの古酒部門が「常温貯蔵3年以上」を条件にしているように、熟成を前提とした分野もあります。ぬる燗にして楽しむのも一案です。
熟成酒は燗でも楽しめます
▶ 燗酒の選び方2026|全国燗酒コンテスト最高金賞51本と温度の楽しみ方シーン別|どのBYを選ぶ?早見表
「新しいBYがいい」「古いBYは避けたい」と決めつけず、飲みたい場面に合わせてBYを選ぶと、日本酒選びがぐっと楽になります。
| 飲みたいシーン | 選び方の目安 | 2026年秋ならこのBY |
|---|---|---|
| 搾りたての新酒を楽しみたい | その年度に搾られた「しぼりたて」「新米新酒」など。11月ごろから出回る | 令和8BY |
| 秋らしい、まろやかな熟成感を楽しみたい | 春に搾って夏を越えた「ひやおろし」「秋あがり」 | 令和7BY |
| 同じ銘柄で年ごとの違いを比べたい | 前の年度のBYと、最新のBYを並べて飲み比べる | 令和7BY・令和8BYなど |
| じっくり熟成した味わいを試したい | 数年前のBYや、熟成を掲げた古酒。燗にしても楽しめる | 令和5BY以前など |
| ギフトや記念日の1本にしたい | 思い出の年に近いBYを探すなど、年度を意識して選ぶ | BYの数字が手がかり |
※あくまで一般的な目安です。味わいや熟成の度合いは、銘柄・造り・保管状態によって異なります。
見どころ⑥:買う前に確認したい、BYのチェックポイント5つ
- 表ラベルのBYを見る:「R7BY」「2025BY」などが書かれていれば、どの年度の酒かが分かります。
- 裏ラベルの製造年月も見る:BYと製造年月が離れているほど、瓶詰めまでに貯蔵期間があった酒です。
- 「新酒」「しぼりたて」はBYを確認:この秋以降に出荷される新酒なら、令和8BYのはずです。
- 保管の表示を確認:生酒・生原酒は要冷蔵が基本です。購入後も、表示どおりに冷蔵庫で保管しましょう。
- BYがない酒は製造年月で判断:BYの表示は任意なので、書かれていなくても問題ではありません。
BYがラベルに書かれた日本酒、おすすめ4本
ネットで見つけやすい、BYがはっきり書かれた4本を選びました。令和7BYが3本、令和5BYが1本で、BYの違いを意識しながら選べます。
※在庫・価格・BYは販売店によって変わるため、購入前に商品ページで最新の表記をご確認ください。
BY(酒造年度)のよくある質問
Q1. 日本酒のラベルにある「BY」とは何ですか?
BYは「Brewery Year」または「Brewing Year」の略で、酒造年度(醸造年度)のことです。酒造年度は毎年7月1日から翌年6月30日までの12か月間で、たとえば2015BYは2015年7月1日から2016年6月30日までを指します。
Q2. 令和7BYと令和8BYは、それぞれいつの酒ですか?
令和7BY(2025BY)は2025年7月1日から2026年6月30日までの酒造年度に造られた酒で、令和8BY(2026BY)は2026年7月1日から2027年6月30日までです。2026年の秋に店頭に並ぶひやおろしは令和7BY、この秋から冬に搾られる新酒は令和8BYにあたります。
Q3. BYと裏ラベルの「製造年月」は何が違うのですか?
BYは酒を仕込んで搾った年度の区分で、製造年月は国税庁の表示基準で「販売する目的をもって容器に充填し密封した時期」とされています。搾ったあとにタンクで貯蔵してから瓶詰めする酒も多く、その場合はBYと製造年月の年がずれます。たとえば令和7BYの酒に、2026年の製造年月が書かれていても、矛盾ではありません。
Q4. BYの表示は法律で義務づけられていますか?
いいえ、BYの表示は法律上の義務ではなく、蔵が任意で記載するものです。複数の年度の酒を合わせたブレンド酒には、通常BYは表示されません。BYが書かれていなくても、製造年月で瓶詰めの時期は確認できます。
Q5. BYが古い日本酒は飲んでも大丈夫ですか?
BYが古いというだけで飲めないとは限りません。日本酒には、あえて熟成させて味わいを変化させた熟成酒(古酒)という分野があり、たとえば全国燗酒コンテストには常温貯蔵3年以上の古酒部門があります。ただし、保管状態によって品質は大きく変わります。生酒や生原酒のように要冷蔵とされている商品は、必ず表示どおりに保管してください。
Q6. しぼりたての新酒はいつ飲めますか?
蔵によって異なりますが、例年11月ごろから「しぼりたて」「新米新酒」といった商品が順次出荷されます。たとえば沢の鶴は、2025年11月10日に令和7酒造年度に醸した新米新酒の生原酒を発売しています。2026年は令和8BYの酒が同じ時期から並び始める見込みです。
Q7. 日本酒の日が10月1日なのはなぜですか?
日本酒造組合中央会が1978年に制定したとされ、理由は主に2つあります。十二支の「酉」は酒壺をかたどった字とされ、10月は酒と縁が深いこと、そして明治時代の酒造税法では酒造年度が10月1日から始まっていたことです。現在の酒造年度は7月1日始まりのため、10月1日は昔の区切りに由来しています。
参考・出典
まとめ:BYが読めれば、日本酒の「いつ」が見えてくる
BYは、7月1日から翌年6月30日までの酒造年度のこと。2026年の秋は、令和7BY(2025BY)のひやおろしと、令和8BY(2026BY)の新酒づくりが重なる季節です。裏ラベルの製造年月とあわせて見れば、仕込みから瓶詰めまでの流れも分かります。
次に日本酒を選ぶときは、ラベルのBYを一度のぞいてみてください。同じ銘柄のBY違いや、11月ごろから出回る新酒、熟成酒など、楽しみ方が一つ増えるはずです。



