2024年12月17日、新宿にある有限会社エニシングのオフィスにて、日本の「モノづくり」の真髄に触れる特別なイベントが開催されました。 本イベントは、愛知県豊橋に残る100年前のシャトル織機で織られた「前掛け」と、日本を代表する「最高級の日本酒」とのコラボレーションを記念したものです。
当日は、有限会社エニシングの西村社長をホストに、福井県鯖江市から「梵(BORN)」の加藤団秀代表、そしてオンラインにて新潟県佐渡市から「天領盃(雅楽代)」の加登仙一社長をお迎えし、伝統と革新が融合した熱いトークセッションと試飲会が行われました。
1. トヨタの原点!100年前の織機が繋ぐ「縁」
イベントの冒頭は、エニシング西村社長による「前掛け」の製造工程の紹介からスタートしました。 注目すべきは、エニシングの工場(愛知県豊橋市)で稼働している「豊田式自動織機」です。トヨタ自動車のルーツである織機メーカー時代の、100年以上前の機械がいまだ現役で動いている様子が動画で紹介されました。
西村社長によると、現代の最新鋭の織機とは異なり、あえて古いシャトル織機を使うことで、空気を含んだふっくらとした風合いの、丈夫で温かみのある生地が織り上がるとのことです。この「あえて手間をかける」姿勢は、後の日本酒造りの話とも深くリンクしていきました。

2. 史上最年少蔵元の挑戦:天領盃酒造「雅楽代(うたしろ)」
24歳でのM&Aによる事業承継
オンラインで登場した天領盃酒造(新潟県佐渡市)の加登仙一社長は、2018年、わずか24歳で当時の史上最年少蔵元として廃業寸前の酒蔵を買収した異色の経歴を持ちます。 留学経験を通じて日本文化、特に日本酒の可能性に目覚めた加登社長は、証券会社勤務を経て酒蔵経営の道へ。最初の2年間はコロナ禍とも重なり苦難の連続でしたが、設備投資と徹底した品質改善によりV字回復を果たしました。

コンセプトは「新しい新潟淡麗」
今回振る舞われたのは、加登社長が立ち上げた新ブランド「雅楽代(うたしろ)」シリーズです。 「雅楽代」という名は、かつて順徳天皇が佐渡に配流された際、島民が歌を詠んで慰めた褒美として与えられた土地「歌代(うたしろ)」に由来します。 加登社長が目指すのは「新しい新潟淡麗」。従来の「淡麗辛口」にとどまらず、甘みと旨味を残しながらも、綺麗で透き通るような余韻を持つお酒です。参加者は、佐渡の風土と若き情熱が詰まった一杯に酔いしれました。
3. 世界のVIPを魅了する「梵」:モーツァルトが醸す奇跡の味
政府専用機にも採用される「日本の翼」
続いて、福井県鯖江市からお越しいただいた「梵(BORN)」の加藤団秀代表によるトークが展開されました。「梵」は、昭和天皇の即位の儀式で採用されて以来、数々の国賓晩餐会や政府専用機の機内酒として採用されるなど、まさに日本を代表する銘酒です。

驚きの醸造法「モーツァルト振動発酵」
会場が最も沸いたのが、「振動発酵法」の話題です。 加藤吉平商店の蔵「天空蔵」では、タンクに取り付けられた多数のBOSE製スピーカーから、24時間365日、モーツァルトの楽曲が大音量で流されています。
加藤代表によると、これは単なる雰囲気作りではありません。
科学的根拠: CD音源ではカットされるような超高周波を含むモーツァルトの楽曲が、酵母の密度を高め、死滅率を下げる効果がある。
味への影響: 振動によって酵母が活性化し、雑味のない、果実のような芳醇な香りと滑らかな口当たりが生まれる。
「蔵に入ると、音楽のリズムに合わせて香りが立ち上がってくるのが分かる」という加藤代表の言葉に、参加者は驚きの声を上げていました。
【試飲酒紹介】勝者のためのトロフィー「夢は正夢(Dreams Come True)」
今回、特別に振る舞われたのが、梵のラインナップでも象徴的な一本、純米大吟醸「夢は正夢」です。 加藤代表が「夢を実現できるオンリーワンの人に捧げるトロフィー」と語るこのお酒には、驚くべきこだわりが詰まっていました。
マイナス10℃で5年熟成: 精米歩合20%の純米大吟醸(全体の約9割)と35%の純米大吟醸をブレンドし、マイナス10℃という極低温で約5年間熟成させています。これにより、美しい黄金色と、枯れることのない滑らかな舌触りが生まれます。
1リットル瓶の秘密: 通常の四合瓶(720ml)ではなく1,000ml(1リットル)なのは、「No.1(オンリーワン)」を表すため。まさに夢を叶えた勝者に贈るトロフィーをイメージした重厚なボトルデザインです。
世界が認める価値: 海外の高級レストランでは1本20〜30万円で提供されることもある最高級酒ですが、日本国内の小売価格では1万円台で購入可能です。
試飲した参加者からは「柔らかくて突き抜けた味」「香りが素晴らしい」といった感嘆の声が上がり、まさにイベントのハイライトとなりました。

※ボトルにサインをいただきました^^
4. 目から鱗のペアリング体験:山廃仕込み「加賀鳶」×チーズの衝撃
「雅楽代」「梵」に続き、もう一種類振る舞われたのが、石川県金沢市で最も長い歴史を持つ酒蔵・福光屋の「加賀鳶(かがとび) 山廃純米」です。
グラスに注がれた瞬間から分かる「黄金色」の輝きは、山廃仕込みならではの特徴。 フルーティーな「雅楽代」や「梵」とは対照的に、お米本来の穀物感をしっかり感じるドシッとした旨味と、キレのある酸味が特徴です。
ここで、日本酒の楽しみ方を広げる「ペアリング」の実演が行われました。
「臭いもの」同士が惹かれ合う: 用意されたブルーチーズのような癖のある発酵食品と、山廃特有の酸(コハク酸)が口の中で出会うと、互いの個性がぶつかることなく、驚くほど旨味が増幅されます。「綺麗な酒には果物、山廃のような腰のある酒にはチーズや味噌などの発酵食品」という方程式に参加者は納得の表情でした。
温度で化ける: 「加賀鳶」のようなタイプは、冷酒だけでなく、常温やぬる燗にすることでさらに本領を発揮します。温めることで酸味がまろやかになり、出汁のような深い味わいに変化するため、参加者からは「温度だけでこれほど味が変わるとは」と驚きの声が上がりました。
開催後記:伝統を守り、革新を続ける「モノづくり」の魂
100年前の織機を守り続けるエニシング、M&Aで新たな酒造りに挑む天領盃、そして最新の振動技術と伝統製法を融合させる梵。 三者に共通していたのは、「変えてはいけない本質」を守るために、「変えるべき手段」を恐れずに進化させるという姿勢でした。
参加者全員に配られた、おちょこ一杯の日本酒の向こう側に、日本のモノづくりの未来と、世界へ羽ばたく可能性を感じる一夜となりました。
ミシュランガイド1ページ目に堂々と掲載される梵のボトル!今回加藤社長がお持ちだった冊子とともにサインをいただきました!



加藤社長、そして今回イベントにご招待いただいたanything西村社長、スタッフの皆様、ありがとうございました^^
